図書館でごはん

本がある以外は、ただくらしにひつようなものだけのような家で。

帝王切開の痛みはあとからやってくる

帝王切開出産が決まり、前日から入院した。

手術に耐えうる体調かのチェックに加え、直前に病気をもらったりしないように等様々な理由があるらしい。

点滴がとても苦手で、手術中はもちろんその前後もずっと点滴と過ごさねばならないことが手術より苦痛に思っていた。

 

特に食事制限もなく、しっかりご飯を食べて就寝。

自然分娩の場合は、仕事上立ち会うことが難しいと行っていた夫も、帝王切開が決まってからは事前に休みをとって立ち会ってくれた。

と言っても手術室に入ることはできないため、待合室で待つだけ。

 

 

手術室には歩いて入る。

手術室のあるフロアで夫に「いってきます」の握手をし(病院の方に勧められた)、重たい扉の中へ点滴とともに入っていった。

人生はじめての手術、そして手術室。

事前に分娩台を見ていたからか、自分の体とほぼ同じ幅のベッドを目にして「こんな細いベッドなの?」と驚いた。

左肩を下にして寝転がり、腰に注射で麻酔。

仰向けになって、首のすぐ下あたりに下半身が見えないようカーテンがされた。

看護師さんや助産師さんに話しかけられながら、ばたばた準備している様子を見ていたら、ほどなく麻酔が効いてきた(らしい)。

半身の麻酔ということで効くまでにかなり時間がかかるのかと思いきや、あっという間だった。

 

ほどなく、切開され、赤ちゃんが産まれた。

「産まれたよ」「おめでとう」などの声が飛び交う中、顔の近くに赤ちゃんを抱いて見せてくれる。

意識ははっきりしているのに、出産の痛みをほとんど感じることなく産まれてきた赤ちゃん。

すぐに新生児室へつれていかれ、体の状態(手足の指の数を声を出して数えていた)をチェックし、身長・体重の数値が伝えられた。

 

その後、夫が新生児室に入り、赤ちゃんを抱いたらしい。

 

赤ちゃんを取り出したら、すぐにお腹を閉じる作業に切り替わった。

もやもやと触られている感覚があるようなないような、ただ、顔をしかめるような痛みを感じることはなく手術が終わった。

 

赤ちゃんが産まれるまでの時間より、お腹を閉じる時間のほうが長かったように感じる。

 

術後は全く動けないため、事前に体の下に敷いてあったバスタオルごと持ち上げられ、移動式ベッドで自室まで戻った。

部屋に戻ると「何かあったらナースコール」だけを伝えられ、看護師さんたちは早々に部屋から去っていった。

あとはもうゆっくりと回復を待つしかないのだろう。

夫は、わたしが麻酔で意識が朦朧としているのではないかと心配だったらしく、普通に受け答えできていることに安心していた。

 

手術疲れだろうか、夫と話しているうちにすぐに眠くなってきた。

ゆっくりして!という夫をベッドから見送って、すぐに眠った。

 

夕方目を覚ますと、じわじわと痛みを感じるようになってきた。

もちろん痛み止めも飲んでいたけれど、お腹を切るという一大事はさすがに痛み止めだけでは隠しきれないのかもしれない。

 

夜は一時間ごとに目がさめた。

 

下腹部の痛みは、ひどい生理痛に近い。

「手術翌日は丸一日ベッドで安静にしてもらいます」と言われ、「暇そう!」と思っていたけれど、「安静にするしかない」状態だった。

小説を持ってきていたけれど、読む気も起きない。

暇と感じることもなく、早く痛みが去ってほしいと願うことに忙しかった。

 

腹筋を使って起き上がろうとすると痛みが走るため、ほとんど体を起こすことなく過ごした。

術後2日目は夜中の目覚めは少なかったものの、痛みは変わらず。

3日目にようやく痛みにも慣れ、うまく起き上がれるコツを掴み、現実に戻ってきた気がした。

 

 

自然分娩と帝王切開とどちらが痛いのだろう?

検温時、なんとなく助産師さんに尋ねたら、

「両方経験したことないからわからないけど、産むとき痛いか産んでから痛いかの違いじゃない?」

と言われた。

自然分娩は、産んだ後に痛みをひっぱらないのかしら?

なんにせよ、人それぞれ、出産の痛みを比べることはできない。

 

事前入院から数えて10日目の朝、その頃には痛みを感じることもなく、ご飯もしっかり食べられる状態で母子ともに元気に退院した。